わたしにとって人類学の変わらぬ魅力は、ふだん何気なしに抱きしめている価値づけや判断の序列を、大胆かつ巧みにひっくり返してみせるところにあります。高級なものと粗野なもの、合理的なものと非合理なもの、正しいものと間違ったもの、普遍的なものと個別的なもの、などなど。こうした序列の転覆は、たいてい才能ある芸術家だけに許された特権なのですが、それを学問の名において正々堂々とできるのですから、これほど愉快で挑戦的なことはありません。けれどもこのひっくり返しは、なにも既存の秩序を乱すことを自己目的化しているのではありません。人類学は、序列が覆い隠し見えにくくしてしまう知や世界のありようの発見に、その存在意義をかけています。これまでわたしは、そのきっかけを、トリニダード・トバゴやキューバをはじめとするカリブ海世界の現場に求めてきました。あつかってきたテーマは、異種混淆化、宗教、共同性、経済、革命、アイロニー、持続可能性、サイバネティクスなどさまざまです。おもな業績に、『無為のクレオール』、『人類学的実践の再構築―ポストコロニアル転回以後』『シンコペーション―ラティーノ/カリビアンの文化実践』『ポスト・ユートピアの人類学』『脱/文脈化を思考する(一橋社会科学 第七巻別冊)』があります。
研究キーワード
カリブ海地域、クレオール、共同性、アイロニー、革命、持続可能性
業績・担当科目など
http://www.soc.hit-u.ac.jp/teaching_staff/osugi.html