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フィールドワークの魅力は、周到に準備した質問からだけでなく、共にいることを通じて、対象の世界との関わりかたにアプローチできるところ。わたしはフィールドで自分の身に起きた交通事故でこの点を実感しました。

なぜ専門に人類学を選んだのですか?

学部の時に第二外国語で履修していた中国語の先生が人類学者でした。その先生の研究対象は中国雲南省のある少数民族でした。話を聞いているうちにその社会に興味を持ち、先生が短期のフィールドワークを行う際に、数人の友人と一緒について行きました。
実際に村に行き、自分の知らない文化に触れ、大変興奮しました。また、聞き取り調査を行う先生の姿を見て、フィールドワークにも興味を持ちました。この経験が人類学を選んだきっかとなりました。

現在どんなテーマで研究をしていますか?

博士課程の研究テーマは、「米国のポリアモリーの共生のありかた」です。ポリアモリーの人びとがいかに他者との関係を生きているのか、に関心があります。主な調査地は南カリフォルニアです。
 

現在の研究テーマに行き着いたきっかけは?

いろいろな理由がありますが…もともと家族や性愛に関心を持っていました。とりわけ、一夫一婦制ではない社会に興味があり、複婚社会と感情をキーワードに研究をしたいと考え、修士課程に入学しました。
その後、ポリアモリーのことを知り、伝統的な婚姻制度が一夫多妻や一妻多夫の社会ではなく、一夫一婦制の国(アメリカ)において、あえて複数の人と合意の上で親密な関係を築いている人びとに興味を持ち、現在のテーマに至りました。
 

一橋社会人類学研究室の特徴は何ですか?

一橋社会人類学には月に一度、合評ゼミがあります。発表者の論文に対し、学生と教員がコメントをする場で、愛のある公開処刑とも言えます。ここでは自身の研究に対しアドバイスがもらえるだけでなく、メンタル面も鍛えることができます!修士の学生にとっては、コメントやリプライ、ディフェンスの仕方を学ぶ場にもなります。

フィールドワークで苦労したこと、フィールドワークの醍醐味は何ですか?

 フィールドワーク中に交通事故に遭いました。廃車になるくらいの大きな事故でしたが、幸いエアバックに守られて無傷でした。しかし、その後運転が怖くなり、なかなか調査に行くことができなくなってしまいました。その時、ポリアモリーの友人が「見えない恐怖の扱い方」を教えてくれました。それは、彼女のジェラシーの扱い方でした。
 このエピソードのように、周到に準備した質問からだけでなく、共にいることを通じて、対象の世界との関わりかたにアプローチできる点が、フィールドワークの魅力だと思います。そして調査者と調査対象の人びとが相互に影響を与え合い、共に変化していく点は、フィールドワークの醍醐味であり、面白い点だと思います。
 

人類学を目指す後輩へのメッセージ

人類学は新しい自分との出会いの場になります。わたしは、人類学を通して自分の人生が豊かになったと感じていますし、人類学と出会えてラッキーだと思っています!

研究キーワード

ポリアモリー、共生、親密性、家族、倫理、セクシュアリティ、米国