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ゼミでは文献の読み方をみっちり学ぶ。個別の文化について学びつつも、地域研究の枠に収まらない議論が可能なのが人類学の魅力。

なぜ専門に人類学を選んだのですか?

もともと浪人時代に社会学者・宮台真司の著作にハマり、社会学に関心を持ちました。慶應の文学部に入り、社会学専攻に進みました。そこではフランス社会学の影響で社会学と人類学を両方学ぶカリキュラムになっていました。宗教社会学を主とした社会学理論に興味があったのですが、その一方でイスラーム社会にも関心があり、実際に自分の目で見るために学部時代にバックパックを背負って中東の国を旅行したりしていました。フィールドワークを行って現地社会の具体的な事例を扱いつつ、他の地域の研究と比較可能な議論を行うことができることが人類学の特徴だと思います。一見西洋社会とは全く違うように見えるイスラーム社会と西洋の社会理論を突き合わせるとどのようなことが言えるだろうか。こうした問いを突き詰められる学問分野が人類学だと考え、修士課程から人類学を専攻することにしました。

現在どんなテーマで研究をしていますか?現在の研究テーマに行き着いたきっかけは?

 今はイラン・イスラーム共和国、テヘランをフィールドにしながら、世俗化時代の信仰について研究しています。
 イスラーム社会を実際に見る中で、一方で進行するように見える世俗化、しかしその一方で確固として残るイスラームという、一見(西洋の理論からすれば)矛盾するような社会の在り方を、なんとか人類学の言語で説明したいと考えたのがきっかけです。修士課程では、フィールドワークに備えて、これまでの宗教研究に批判的視座をもたらした、人類学者タラル・アサドの議論を中心に批判的に検討する理論的な研究をしました。

なぜ一橋社会人類学を選んだのですか?/一橋社会人類学研究室の特徴は何ですか?/一橋社会人類学に来て良かったことは何ですか?

一橋大学社会人類学研究室の特徴は教員と学生というフォーマルな関係の他に、先輩―後輩間で学ぶことが多いということです。フィールドでのノウハウや、申請書の書き方、また行き詰った時に共同研究室での雑談などインフォーマルな関係の伝統が続いていることが特徴だと思います。
一橋の研究室で修士時代には、ゼミでのテキストの輪読を通じて(特に英語の)文献の読み方を徹底的に学びました。単に英語を訳せるとか、内容について知識があるということを超えて、常に問いかけながら読んでいくという作法を見につけることができたことは、財産だと思っています。

人類学を目指す後輩へのメッセージ

人文系が役に立たないと言われて久しい昨今です。人文系研究者の端くれとしては、役に立つ立たないという社会の価値そのものを批判的に考察し、新しい価値を生み出していくのが人文系の価値である、と反論したいところです。が、そうでなくても、現在研究とは違うところで活躍する修士課程時代の同期を見る限り、一橋で人類学を学ぶことで得られることは大きいと思います。みなさんも研究者を目指すにせよ目指さないにせよ、一橋大学の人類学研究室で学んでみることはいかがでしょうか?

研究キーワード

イスラーム、シーア派、ポスト世俗主義、集会、実践